GPS基準局座標の設定・見直し基準 (令和3年7月制定)

 GPS機構では、港湾工事の確実な施工を支えるため全国の主要港湾にGPS基準局を設置・運営しています。高精度なRTK-GPS測位に必要な基準局座標は適切な管理が重要となります。GPS機構では毎年、GPS基準局の確認測量を行い、座標の誤差を確認しその誤差が見直し基準値を超えたGPS基準局については、工事に支障のないタイミングで座標変更を行うなど適切な管理に努めています。

1.GPS基準局座標の設定方法

  1. 工事基準点を与点として静止測量(スタティック法)により座標決定
    横浜、衣浦、苅田、鹿児島
  2. 基準局BMを与点として静止測量(スタティック法)により座標決定
    青海、長島
  3. 電子基準点1点(直近)を既知点として静止測量(スタティック法)により座標決定
    八戸、新潟、関門
  4. 電子基準点3(4)点を既知点として静止測量(スタティック法)により座標決定
    小名浜、千葉、川崎、観音崎、大阪、神戸、那覇

【参考】

静止測量は、観測時間は24時間※、データ取得間隔は30秒で行い、基線解析はTOWISE(株式会社ニコン·トリンブル製)を用い、PCV補正、セミダイナミック補正および三次元網平均を実施することを標準としている。

※工事基準点を与点とする基準局の観測時間は3時間程度としている。その理由として、基準局座標の決定後確認測量(いわゆる逆打ち測量)を行うことにより、工事基準点座標と基準局座標の整合を確認していため。

【解説】

・基準局座標の設定は、単一のプロジェクトや特定エリアの港湾工事等を対象とする場合には、標準的で最も確実な工事基準点等を与点とする方法が広く採用されていた。東日本大震災による地殻変動で東北、関東などの工事基準点等が動き、その後の見直しが遅れたことから、電子基準点を既知点とする方法も採用されるようになった。
・電子基準点を既知点とする方法では、令和元年度より公共測量作業規定の準則に準じて電子基準点2点以上(実際には3~4点)を採用している。

2.GPS基準局座標の確認測量

 基準局座標の確認測量を毎年1回実施する。
 確認測量の方法は、最も近い電子基準点(1点)を既知点として静止測量(スタティック法)により測位。

【参考】

①観測時間は24時間、データ取得間隔は30秒以下。
②基線解析はTOWISE(株式会社ニコン·トリンブル製)を使用。
③PCV補正、セミダイナミック補正、三次元網平均の実施。

【解説】

・確認測量は毎年行うため、費用対効果に優れる電子基準点1点を既知点とする方法を採用している。
・なお電子基準点3(4)点を既知点とする方法と、電子基準点1点を既知点とする方法について比較すると、その精度に実用上問題となる相違はなく、むしろ電子基準点3点を既知点とする方法は、電子基準点の平面配置によって鉛直方向の誤差が不安定で数値が大きくなる傾向がある(令和2年3月、横浜基準局の座標測量結果)。

3.GPS基準局座標の見直し基準

  1. 全ての基準局について、水平·垂直誤差5㎝以下を目標に座標を管理する。
  2. 電子基準点を既知点として座標を定めた基準局については、国土地理院の民間等電子基準点登録制度(A級、土木及び建築工事)に準じて水平誤差3㎝以下を目標に座標を管理する。

【参考】

・国土地理院では民間電子基準点のGNSS観測データの品質として、A級(土木及び建築工事)では、許容範囲:水平30mm、高さ90mmの品質基準を満たすこととしている。


4.GPS基準局座標の誤差の確認

 基準局座標の確認測量を毎年1回実施し、基準局座標との誤差を確認する。
 確認測量は電子基準点1点を既知点とする方法を採用しており、基準局座標は工事基準点を与点とする方法及び電子基準点3点を既知点とする方法などで座標を求めており、その手法の相違に留意する必要がある(工事発注者が指定する工事基準点等が既に誤差を含んでいる場合等がある)。
 このため状況に応じて、基準局座標を決定した初年度に実施した確認測量と、基準局座標の誤差を固定誤差とし、翌年度以降の確認測量値を判定することなどが必要となる。